失敗しない矯正歯科選び

  • 矯正歯科の選び方
  • 治療結果をより良くするために

 

はじめに「矯正歯科治療」を知る

矯正治療の流れ

「矯正治療の流れ」相談⇒検査⇒診断⇒治療⇒保定⇒定期健診
●矯正相談

矯正相談は、患者さんの主訴(一番気になるところ)をもとに、不正咬合の原因・状態を判断していきます。
ここでは主に視診・触診のみによるもので、レントゲン・模型分析を行う前の段階ですので大まかな説明となります。

とは言え、不正咬合の種類、使用する装置とその特徴、治療の流れと期間、料金、等についてある程度詳しく説明を受けることができます。同様の不正咬合の治験例(写真・模型)を見せてもらい、矯正治療を始めるかどうかをゆっくり考えて下さい。料金的には、矯正相談料が必要なところと無料なところがありますが、これから高額な治療費をかけるのですから有料無料にとらわれず、しっかりと矯正歯科医院を選んで下さい。

●検査・診断

相談では大まかな説明ですので、より詳しい検査を行い確定診断・治療方針を策定していきます。不正咬合の状態により検査方法は異なりますが、主に顔面・口腔内写真撮影、レントゲン写真撮影、模型作製、その他として口腔内検査・顎運動検査、等があります。

これにより、最終的な診断を下し治療方針が決まるわけですが、時には治療方針が複数の選択枝になることがあります。
例えば、歯を抜くか抜かないか、矯正治療のみか手術が必要か(外科矯正)、マルチブラケット装置は外側と裏側のどちらに装着するか、装置は金属ブラケットか審美ブラケットか、等です。それぞれに長所短所・可能不可能・治療結果の違いがありますので、十分な説明を受け、よく考えてから治療を始めるかどうかを決めて下さい。

●矯正治療

装置を用いた治療を動的治療とも言います。不正咬合の種類により使用する装置は様々で、主治医の説明を守って下さい。矯正治療では、患者さんが頑張ったところはそのまま良い結果として現れ、逆にサボったところは悪い結果として現れます。歯磨き、装置(ヘッドギア、チンキャップ)の装着時間、口腔内ゴム等です。また、歯磨きが悪かったり喫煙者(時には受動喫煙)の場合、口腔内が炎症したり歯の動きが悪くなったりします。

●保定と定期健診

詳しくは「治療後の管理」をご参照下さい。

矯正治療の特徴を知る

良い治療結果を導くためには矯正治療の特徴を知ることが大切です。「矯正治療の特徴」をご参照下さい。

主訴と原因を明確にする

患者さんにとって一番気になるところを「主訴」と言いますが、実際に検査を受け診断・治療方針の説明を聞くと、それ以外にも治したいところが出てきます。また、いろいろな説明を受けますので混乱しがちになります。
できればノートにまとめ整理されると理解しやすく、良い治療結果を出すためにやるべきことが明確になります。分からないことはどんどん聞いてみましょう。

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矯正歯科の選び方

矯正歯科医院・矯正歯科医について

矯正治療は治療期間が長く、料金も高額となるため矯正歯科医院を選ぶのに苦労されると思います。法律的には全ての歯科医院で歯科医師による矯正治療が可能となっています。

しかしながら、治療結果は決して一律ではなくむしろ大きく異なっているのが現状です。この要因は、矯正治療が自由診療(保険外治療)であり、大学を卒業してから詳しい知識・治療技術・治療経験を習得していることが理由と考えられます。(「技術力の判断」を参照)

基本的に

「安い」「近い」「早い」で歯科医院を選ぶのは一番良くない方法です。
一生の歯並びにするわけですから、やはりそれなりの料金がかかります。しかし、質の高い治療結果となることでその後の医科・歯科治療に要する治療費は少なくなるはずです(「一部を除き、保険外治療となり費用がかかります」を参照)。近いからといって、十分な治療技術を有しているかは分かりません。また、矯正治療には一定の治療期間が必要です。当然長過ぎるのは良くありませんが、早すぎるのも質の高い治療結果となっているか疑問です。
「安い」「近い」「早い」だけで選ばないで下さい。
さらに、急を必要とする場合(急患)や長期にわたり経過観察を望む場合は、矯正歯科医師が常勤していると安心です。

ただ、歯並びが悪いからといって命にかかわるわけではありませんし、人として悪いことをしているわけでもありません。従って、「治さなければいけない」とか「ほっておくと大変なことになる」と言って患者さんを不安がらせる歯科医はいかがなものでしょうか?
それよりも、原因は何か、ほっておくとどのような問題があるか、ではどのような方法・装置・期間・料金で治療するのか、治療におけるリスクは何か、についてしっかりと説明をしてくれる矯正歯科を選ぶべきと考えます。

ただし、お知らせしておく情報があります。
東京歯科大学 宮崎晴代先生の研究では、8020運動達成者(80歳で20本以上の歯が残っている方)の歯並びを調査したところ、下顎前突(反対咬合)・開咬(前歯が開いている)の方は認められなかったそうです。(抄録参照)
つまり、これらの不正咬合では将来的に歯が残りにくいことが考えられます。
(「矯正治療の特徴」もご参照下さい)

矯正相談時

矯正相談は、複数の医院で受けてみてその違いを調べてみるのも一案です。

もし術者がしっかりとした技術を有しているのであれば、同じような症例があるはずですので、治療前後の写真・模型、さらに術後2年、5年、10年といった長期にわたる安定した資料を見せてもらいましょう。特に模型では、前歯だけでなく、横の噛み合わせは緊密か、奥歯はきちんと噛んでいるか、等を見せてもらって下さい。術者の技術力がある程度判断できるはずです。

技術力の判断

十分な技術があるか否かを判断するのは本人ではなく第三者です。従って、しっかりとした組織・機関が認める資格を有することも矯正歯科医師を選択する目安となるでしょう。
特に最近は、日本における矯正歯科審査制度が確立してきており、その資格保有者を選ぶのも一考です。日本矯正歯科学会の臨床指導医(旧専門医)制度をご参考下さい(※参照:日本矯正歯科学会
学会所属年数や単なる治療総数によって資格が得られる制度と異なり、この専門医制度は様々な症例ごとの治療結果・術後の安定について審査しており、他国の制度と比較してもより厳正な審査基準となっています。あくまで目安としてご参照下さい。

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治療結果をより良くするために

矯正治療を理解し患者さん自身の努力が不可欠です

前にも述べましたが、矯正治療においてより良い治療結果を生み出すために最も大切なものは、術者の知識・技術・経験と共に患者さんの努力が不可欠となります。

最近は、目立たない治療、取外しのできる装置、等が宣伝されています。これらは患者さんのニーズに合わせて開発されてきました。当然、長所があれば短所もあります。
私がこれまで矯正臨床で学んできた経験から申し上げますと、より質の高い治療結果を生み出す装置として最良のものは、従来からある外側に貼る金属ブラケットによる治療で、これに勝るものはないと考えています。ただし、特に審美性は治療を始める上で極めて重要な点ですので、審美ブラケットを使用した際の注意点をしっかりと聞いた上で開始して下さい。

喫煙はできる限りやめましょう

歯は、骨を溶かす細胞(破骨細胞)と骨を作る細胞(骨芽細胞)の相互作用により骨の中を移動します。当然、栄養や酸素が必要となりますが、タバコを吸うとニコチン作用により末梢血管が収縮して血流量が減少します。従って、歯牙移動が十分でなかったり治療期間が長引いたり、また歯周病の原因となります。時には、受動喫煙でも同様の症状を認めることがあります。矯正治療中は(できれば治療後も)喫煙は避けるべきと考えます。
近年、「歯科矯正用アンカースクリュー」というチタン製のネジを用いた治療法が進み、治療結果・期間が改善しています。しかし、治療中に脱落すると治療に悪影響を及ぼすことがあり、その原因の一つに「喫煙」があります。私の臨床経験では、喫煙されている患者さん、さらに受動喫煙の患者さんではほとんど脱落しているのが現状です。喫煙は、矯正治療に限らず「百害あって一利なし」だと思います。

成人矯正

最近は、大人になって矯正治療を希望される方が増えてきました(成人矯正)。
これは、個人のニーズの多様化や、IT化に伴い、いろいろな情報を取得することが容易になってきたことや価値観の向上によるものと考えられます。しかしながら、大人と子供では違いがあるため、その違いを十分に理解した上で治療を始めるかどうかを決める必要があります。
では、大人と子供の矯正はどこが違うのでしょうか?

大人と子供の治療に関する相違点は、

・顎の成長がない(成長が終了している)
 →骨格に原因がある場合、外科矯正が必要となることがある

・永久歯が萌出済みである
 →直ちに治療を開始できる(利点)

・虫歯の治療や既に喪失した歯がある
 →審美的に良くなかったり、抜歯部位の選択が難しくなる(良い歯を残したい)、
  矯正治療後に冠を治したりする場合がある(別途費用がかかる)

・歯周病や顎関節症など他の疾患を伴っていることがある
 →治療が複雑、困難になる

・治療に対する目的が明確である
 →反面、自己主張が強いため指示されたことに協力できず治療結果が悪くなる

・喫煙、ストレスなどの生活環境など複雑な要因を伴うことが多い
 →歯の動きが悪くなったり、歯ぎしり、顎関節症、舌癖の悪化、等治療に悪影響を及ぼすことがある

・子供と比較して適応性が悪い
 →子供と比較して痛がったり、歯の移動が遅い場合がある

・治療後の安定が悪いことがある
 →長期の保定装置装着が大切です

これらは、あくまでも子供の治療と比較した場合で、治療前と比べて治療後の状態は当然良くなります。治療開始前に、自分の状態について十分に説明を受け、特に大事な点(治療上、困難と思われる点)を認識しておくことが大切です。

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マルチブラケット装置

マルチブラケット装置(ハリガネを交換しながら歯を動かしていきます)には、「表側に金属ブラケット」「表側に審美ブラケット(白色・透明)」「裏側に金属ブラケット」を貼る方法があります。これまでの私の臨床経験では、この順番で治療期間が長くなり、治療結果が悪くなり、料金が高くなります。やはり「金属ブラケット」に勝るものはありません。
しかしながら、特に大人の方は、周囲の環境から目立たない「審美ブラケット」を希望されることが多く、いざ治療が開始されると「いつ外れるのですか?(早く外したい)」「ちょっとここがズレていないか?」「口元をもっと下げたい(治療結果に不満)」ということを言われます。
装置の違いについて十分な説明を受け、納得した上で選択して下さい。

マルチブラケット装置の種類「金属ブラケット(表側)」「審美ブラケット(表側)」「リンガルブラケット(裏側)」

子供の矯正

子供の矯正治療を開始する上で理解していただきたいこととして、
完全な治療結果を出すには、永久歯が生え揃ってから(永久歯列)「大人の矯正治療(本格的矯正治療、第2段階治療)」を行ないます。従って、乳歯と永久歯の混合歯列「子供の矯正治療(第1段階治療)」では、いかに永久歯を虫歯にせず、できる限り非抜歯で並べ、顎の成長を診ながら、悪習癖を改善していく、ということになります。

そして、永久歯が生え揃い、顎の成長を確認してから大人の矯正治療(本格的矯正治療、第2段階治療)を開始するかを改めて検査します。治療の目的、治療方法(抜歯の必要性、治療のリスク、外科矯正など)、何より患者(子供)さん本人が矯正治療を希望するか、についてしっかり考えてから治療するかどうかを決めれば良いと思います。

時々耳にするのは「装置を貼るのがかわいそう」「習い事が忙しくて通えない」「本人のやる気がない」といった内容です。そういう場合は「今は矯正治療を始めることは難しいと思います」とお伝えしています。
子供の治療では、患者さん(本人、そしてご両親)の協力が不可欠となります。治療装置をつけることと、凸凹の歯並びのままのリスクとどちらがかわいそうか、治療と習い事のどちらを優先するか、よく考え納得してから矯正治療を開始して下さい。

ところで、大人とくらべて子供は治療中あまり痛がりませんし歯も非常に速く動きます。いつもながら子供の適応力には驚かされます。

一番願うこと

「矯正治療をやって本当に良かった」と思っていただくことです。

 

失敗しない[矯正歯科]選び 矯正治療のメリットとデメリット、これから矯正を始める患者さんに知っておいて欲しい、「本当に満足できる矯正歯科医」の選び方をご案内する特集ページです。

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治療後の管理(保定)矯正治療完了後のメンテナンス方法や後戻りしないためのポイントを紹介。

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